妻が語る政治家の夫



 うちのだんなさまは、無所属・無政党です。秘書もいなければ専用の事務所もないので、自宅と議会を拠点に活動している議員です。

 2世でもなく、無所属で おかねも 地盤も ほとんどなかったので、うちのだんなさまは典型的な「政界のアウトロー」でした。でも、だんなさまは、むしろそれに誇りをもっています。そして、そんなだんなさまを私も誇りに思っています。



無所属 母子家庭育ち
堀部安兵衛 街頭演説
議会審議 調査研究
夜間大学院 活動報告
選挙で名前の連呼はしない 有権者に媚びません。
結婚披露宴に欠席する理由

政治家妻みゆき

生粋の無所属
 うちのだんなさまは、完全な無所属で、組合や政党などのお世話になっていない議員です。

 もちろん、当選することだけを考えたら、そういうところにお世話になるのが断然有利なのですが、だんなさまは嫌がっています。

 それは、一度そういうところにお世話になってしまうと、いろいろしがらみが増えてしまい、正論が言えなくなってしまうからだといいます。そういうわけで、だんなさまには、若くして落選経験もあります。

 議員になる前も議員になってからも、だんなさまのそんなきまじめな姿勢は変わっていません。そんなだんなさまが取り組んだ活動は、だんなさまがまだ無名だったころから、数々の新聞記事に取り上げられてきました。

 だんなさまは、政党をころころ変わっている政治家の方が話題になると、やるせない顔をします。まじめに政治に取り組もうと思っても、そういう人たちのせいで、どの政治家もみな同じだと思われるのが嫌みたいです。



母子家庭育ち
 だんなさまのお父さまは、早くに亡くなりました。それからは、母の手ひとつで育てられました。早すぎる夫の死、経済的な危機、幼い子どもを抱え、その頃のお母さまの気持ちとご苦労を想像すると、いたたまれない気持ちでいっぱいになります。

 だんなさまは、大学へは進学できないものだとあきらめていました。しかし、幸いにして、各種奨学金や公庫の融資などを使って大学、さらに大学院にも進学することができました。

 いまになって、そのときの奨学金という名の借金の重みに苦しんでいますが、きちんと勉強できたことは、とても感謝しているみたいです。「機会の平等」を保障し、「公正」な社会を実現するためにも、政治の役割が重要なことを身をもって感じたといいます。

 もっとも、本人は、中途半端な勉強しかできなかったと悔やんでいますが、これまでの蓄積は、着実に現在、活かされていると思います。

 だんなさまの着眼点や発言はいつも鋭く、議会活動にも、それが随所で表れていると思います。だんなさまの硬い意志とねばり強さは、ひとりで働きながら子どもを育てたお母さんに似たのかもしれません。



堀部安兵衛
 うちのだんなさまは、忠臣蔵四十七士の陰のリーダーといわれた剣客である堀部安兵衛に名前が似ているため、よく、外で演説をしていると、「あっ、安兵衛だ」と言われます。

 だんなさまの名前は、どうやら、だんなさまのおじいさまがもともとの名づけ親のようです。堀部安兵衛のように、たとえ無謀であっても、己れの信ずるところに勇敢に立ち向かっていくように‥‥との願いがこもっていると、おじいさまに聞かされたことがあるそうです。

 だから、だんなさまが安兵衛伝説の地・高田馬場下にある早稲田に入学したときは、偶然以上の何か深い縁を感じたそうです。だから、「あっ、安兵衛だ!」と言われると、実はとってもうれしそうです。



街頭演説
 うちのだんなさまは、朝や夕方に駅付近で活動報告を兼ねて街頭演説をしたりします。

 妻である私がいうのもなんなんですが、だんなさまは演説がとても上手です。よく通る声で、ハキハキとしゃべり、となりでチラシを配っていても安心していられます。

 でも、どんなに流暢に演説をしていても、だんなさまは毎回とても緊張しているみたいです。はじめて駅で演説したときも足がぶるぶるふるえたとか・・・

 演説の内容は、いつのまに考えているのだろう・・・と思うくらい、よく変わります。「演説よりも、もっと自分の名前を言わないと、やっている意味がない」と助言してくださる方もいますが、だんなさまは、あまり気にとめていないようです。実際、なかなか名前を覚えてもらえていないような気がします。

 選挙中にも「うるさいだけの名前の連呼はしない」とだんさまに言われたときは、さすがに「それじゃ当選できないじゃないの?」と思ってしまいましたが・・・でも、だんなさまは、こう!と決めたことは、ガンとして譲らない人なので、私も説得を諦めました。

 だんなさまは、貧乏候補だったので、私が知り合ったころから、宣伝用の選挙カーとか照明器具ひとつ持っていませんでした。いまでも街頭演説といっても、くらーい道ばたに立ってしゃべっているだけです。だから、夜なんか、暗くって、「声はするけど、どこにいるの?」とチラシを配っている私に聞いてくる人もいます。

 さすがに、このときばかりは、悲しくなってしまいます。さすがのだんなさまも、がっくり。最近は、家にあった古いちゃぶ台を持っていって、そこに立って演説していますが・・・あんまり変化はないみたいです。



議会審議
 地方議会の正式な定例会の開催は、1年のうち4期間に分かれています(それ以外の時期にやるときは、臨時会とか閉会中の審議という扱いになってしまうのだそうです)。定例会では、本会議場で一般質問が行われ、庁内放送にその模様が放映されます。

 だんなさまは、いつも皆勤賞です。「りっぱだね」と言ってくださる人もいるのですが、だんなさま自身は、問い質したいことがたくさんあるので、もっともっと登壇の機会が欲しいみたいです。だから、一般質問の前は、いつも質問の内容を絞るのに、とっても手間取っています。

 はじめて、登壇した時、だんなさまはものすごい緊張したそうです。でも、とても一年生議員だとは思えないくらい、りっぱな登壇でした。その日の私の日記では150点をあげたくらいです。たぶんなめていただろうお役人さまもたじたじだったので、うれしかったです。

 傍聴席の数は限られているし、私は、毎回、議員控室のテレビで見ています。その度、私も緊張していて、まるで受験生の母親になったかのように落ち着きません(笑)。



調査研究
 普段はどちらかというと、おおらかな人なのですが、書類にまみれて調査・研究をしている時は、ホントにホントに細かいです。疑問に思い、納得できない事がある時は、そのままにしておけないみたいです。

 そして、夢中になると、時間も忘れ、ご飯も食べないでもくもくと調べものをします。声をかけても聞こえない時もあるので、時々、心配になる事もあります。

 また、だんなさまは自分の書いた文章をとても大切にします。書いたものが納得できない時は、うなってます。広報チラシやホームページでの言葉には、私もうなっています。だから、ひとりでもたくさんの方に、真剣に読んでもらいたいと思っています。

 だんなさまは、厳しい人だけど、まっすぐな人なので、少しぐらい誤解されても、そのまっすぐな気持ちを まっすぐに伝えて欲しいと思っています。



夜間大学院
 うちのだんなさまは、私との入籍を機に、逆に籍を置いていた夜間大学院をやめました。

 私も、選挙のお手伝いをしているとき、仕事を辞めたことをだんなさまには、当選するまで内緒にしていましたが、今度は、だんなさまに逆に内緒にされていました。

 大学院から通知がきて、その話を聞かされた時、私はなんだか自分のせいだと思わずにはいられませんでした。だんなさまはそれを否定していましたが、選挙や借金で継続することが苦しくなったときも、かなり無理をして籍を置いてきた大学院です。やっぱり私のせいだと思います。

 正論を言うために、どこの団体にも政党にもお世話にならない、そのために無所属で活動すると決めただんなさま。結婚前、無所属で活動できるのは、自分に妻や子どもがいなくて身軽だから・・・と言ってました。

 政治家は、ただでさえ不安定なお仕事です。ましてや無所属議員は、もっともっと不安定です。いつ落選するかもわかりません。ただてさえ足場の弱い立場、嫁さんまでもらったら、ますますプレッシャーです。

 だんなさまからは、結婚前に、返済しなければならない奨学金などの借金をいっぱい抱えているので、あんまり贅沢な生活はできないけど許してと申し訳なさそうに言ってきました。はっきりとは言いませんでしたが、きっと次の選挙を考えたら、節約しないといけないと思ったんだ思います。

 だんなさまは、議会活動のためにこそ、高度な研究に関心を寄せなくてはならないという強い思いをもっていました。せっかく入った大学院です。続けて欲しかったけど、だんなさまが自分で悩んでだした結論なので、黙って見守ります。

 退学の通知をじっと見つめていた姿をみたときは、やっぱりかわいそうでした。



活動報告
 だんなさまは、いろいろな機会をとらえて、活動報告をしています。

 広報チラシや駅頭演説、報告会、さらに必要なときは個別にお会いしたり・・・でも、人口が50万人もいる都市で、すべての人と会って話をすることは不可能なので、ホームページでの報告を大切にしています。

 定期的な報告だけでなく、その都度、テーマを決めて、ご意見を募ったりしています。ただ、パソコンの普及によって、寄せられるメールの数も増えてきて、一生懸命お返事を書いてはいるけれど、なかなか追いつかないっと悩ましげです。



選挙で名前の連呼はしない。
 だんなさまには、「名前の連呼をしない」というモットーもあります。

 選挙になると、誰も彼も静かな住宅街のなかにまで選挙カーを乗りつけて、名前の連呼ばかりしています。でも、よく考えてみたら、名前の連呼と政治とは、なんの関係もないことなのです。

 だんなさまは、選挙事務所や選挙カー(街頭宣伝車)をもっていません。選挙にはできるだけお金をかけないようにし、下品なだけの名前の連呼はやりませんでした。

 というのも、下品で尊敬されない政治をしていては、ますます政治は軽蔑されるだけだからです。政治に「品」を取り戻すためにも、選挙では、ハンドマイク片手に主に駅前や大通りで考え方を演説しました。

 最初の挑戦では、新聞に「選挙カーもなく、もっぱら自転車に乗っての選挙戦」と取り上げられました。このときは、落選してしまいましたが、2度目の挑戦では、同じやり方で堂々の上位当選を果たし、今度は「都市部で票変」「マル優当選」と新聞やテレビで報道されました。

 これからも、名前の連呼ではなく、ちゃんとした演説だけの選挙をしていくと言っています。



有権者に媚びません。
 だんなさまには、「有権者に媚びません」というモットーがあります。選挙のときも、それを自分のキャッチ・フレーズにしていました。

 日本の政治は何でもありになってしまっています。最初から、いまの政党や圧力団体などに頼って立候補しているようでは、公正な政治などできるわけがありません。日本をここまでダメにしてきたのは、落選を恐れて、有権者に媚びてばかりいる政治家だと、そうだんなさまは言いたいのです。

 また、うちのだんなさまは、最初から「交通違反のもみ消しや就職のお世話などは一切できません」とハッキリ打ち出して選挙に出ていました。

 おかげさまで、うちのだんなさまに、そんなお願いごとをする人はいないので、本当に助かっています。



結婚披露宴に欠席する理由
 政治家にとって冠婚葬祭は欠かしてはならない行事です。いや、とてもとても大事な行事です。だから、他人の不幸を利用して売名に励んでいる議員さんは、後を絶たないようです。

 なんと国会議員ともなると、年間1,000万円以上も冠婚葬祭費を使っている人もいるそうです。「カネがかかる政治」は、こんなところにも、その原因があるんです。

 国会議員っといっても、税引き後の歳費は1,000万円台なのです。議員から弔電をもらって喜んでいてはいけないと思います。それは税金とかヤミ献金で払ってる弔電なのかもしれないです。

 うちのだんなさまは、そんな「いまの政治のあり方」「いまの政治家の存在のあり方」に対して、身をもって異議申立したいという意図から、

 すべての有権者の個人的な慶弔に出席できない以上は、(1)結婚披露宴には行かないとか (2)結果的に単なる政治家の売名目的になってしまう祝電・弔電は打たないとか、そんな厳しい約束を自分に課しています。

 (ちなみに、とくにお世話になった方で、どうしても出席すべきお葬式には、事前に連絡し、お香典ではなくお線香で控え目にご挨拶に行きます)。


 だけど、いつも複雑そうです。だんなさまは、披露宴の招待状が届くたび、苦しんでいます。本音では出席したい。その気持ちが痛いほどわかるだけに、あえて欠席を知らせる長い手紙を書いているだんなさまをみるのは、私もつらいです。

 だんなさまの姿勢は、一見すると非常識に見えるかもしれません。選挙のことを考えると、政治家にとって冠婚葬祭は欠かしてはならない行事です。とくに地方で式を開くと、地元のすべての議員から祝電・弔電が送られてくることもあるそうです(だから、首都・東京23区の議員よりも、地方の県庁所在地の市の議員の方が報酬が多いのだそうです)。

 でも、やっぱり、それが政治におカネがかかる大きな原因のひとつになっているのは間違いないと思います。

 腐敗している政治や政治風土の改善を求めるために、だんなさま(議員)の立場で率先垂範できる方法は、「身をもって節度を示すこと」しかないので、どうかわかってあげてください。



政治家妻みゆき